いよいよ9月8日が間近になった。最初に飯久保廣嗣さんからA50の話を伺ったときの状況を考えると、よくぞここまで来たというのが率直な感想だ。
A50が提起した問題は、過去50年の支援と協力をアメリカに感謝するというだけでは、その一部しか果たせない。敢えていえば、アメリカとしても日本は慈善事業の対象ではなかった筈だ。アメリカなりの戦略があり、それなりのメリットもあったと思う。日本は太平洋戦争で徹底的に敗れた。にもかかわらず、自由な形で復興の道を辿ることができた。これについて感謝しなければならない国は沢山ある。その最右翼がアメリカであるということだ。それを踏まえて感謝する。
しかし、日本のこれまでの隆盛は、占領行政に当ったマッカーサーでさえ予期しなかったにちがいない。サンフランシスコで講和条約の調印に立ち会った諸先輩にしても同じだろう。肝心なのはこれからの50年だ。これからの50年に日本の責任をどう果たすかだ。とくに日米関係は、世界の国々に対して大きな責任を担うことになると思う。つまり、この機会に改めて日米関係を見直す必要がある。いままで以上にその関係は重要であり続けるが、中身は変わってきている。中期的に米中関係が重要に
日米関係が日本にとって最も重要な二国関係であり続けることに今後も変わりはない。しかし、今後アジアにおいては中国が政治的、経済的、軍事的あるいは文化的にも大きな影響力を持つようになるだろう。日本の中には、中国の成長を歓迎しない人も正直言っているかもしれない。しかし、それよりも日本が考えておかなければならないのは、仮に中国が大国となった時にどうするのか、また、世界各国にとってプラスにならないようなことが中国で生じうる場合に、これをそうならぬようにしていくためにはどうすればよいのかということである。中国が持つ可能性を上手くharnessする(乗りこなす)ことが重要で日本は他の国々と協力しなければならない。そのときもっとも重要なのはアメリカとの関係だ。
中長期的に考えると、世界で最も重要な二国間関係は米中関係であると見る向きは多い。例えば、透徹した歴史観で知られるシンガポールのリー・クワン・ユー(シニア・ミニスター)は、アメリカと中国がこれからの世界においてディファイング・ロール(決定的役割)を果たすことになろうと言っているがこれは否定しえない。三国関係を視野に入れよ
では日本は、ただそれを傍観するだけ、単なる脇役かというとそうではない。米国のユニラテラリズムに対する心配はこれからもなくなることはない。また、中国の発展がおかしな方向に進まぬようにするという視点に立てば、例えば中国のポテンシャルが拡大するなかで、貧富の格差が大きくなる一方ならば、当然そこにはリスクが顕在化することになるわけで、これに歯止めをかけるためにも米中日の緊密な三国関係が重要なのである。
すなわち、日米関係というときには中国を視野に入れ、もちろん世界の他の国々をも視野に入れて考えなければならなくなるということだ。これが、これからの50年の、日米関係の重要さの新しい意味になる。これを認識した上での二国間関係を考えなければ意味がない。議論の土壌を
例えば沖縄の基地問題、憲法の問題、小沢一郎氏のいう「普通の国」になるのか否かといった議論が挙げられるが、これらは日本人自身の問題であると同時に、日米関係、他の国々との関係にとっても大事である。
率直にいって、これらの問題をこれまでの日米関係の中でもフリーに、フランクに論議してきたか、遠慮があったのではないか。日本は確かに戦争で近隣諸国、アジア、アメリカ等、多くの国々に迷惑をかけた。その罪悪感ゆえに、はっきりと物を言わなかったことはないのか。罪を犯したら一生消せないのか。罪悪感は意識しつつもきちんと議論しなければいけないのではないか。
所詮人間は人間である。進歩がその判断を助けてくれるとはいえ、なお人間の不完全性は未来永劫に残る。これからの世界も人間がつくる世界である。人間が犯す過ちや誤解はありうる。
日本の国際社会への貢献を考えた際、黙ってしまうのか、それとも経緯を前向きに判断力に生かすのかという選択肢の中では、日本は前向きな姿勢を求めるだろう。つまり、アメリカを含めた友好国の中で、積極的に貢献するべきだ。
日本がナショナリスティックになるぞと批判する向きもある。しかし、それが間違いだということは行動で示せばよい。そういわれて萎縮するのではなく、それを糧として生かせばよい。
改憲についても、国内で徹底的に議論すべきだ。これまでは議論さえせず封じ込めてこなかったか。
こうした日本人自身の自らのあり方と日米関係の見直しは、アメリカをないがしろにしろとか軽視しろということではない。視野に入れるべき世界が大きく、複雑になったから、見直しが必要なのであり、その中で日米関係の重要さの中身は変わるが、むしろ一段と重みを増すということなのだ。
A50事業は、そして9月8日は、そうした新しい日米関係のスタートであると私は考える。
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